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ハトノユメ

自作小説ブログ

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春にあそぶ (5)

「失礼いたします」

ユウリはそう言うと、手押車(カート)とともにゆっくりと部屋に入ってきた。

手押車の上には茶器がしつらえられている。


「ああ、もうそんな時間か。でもどうしたの、ユウリが持ってくるなんて」

刺繍の手習いの合間に茶を飲んで休憩するのは毎日のことだ。が、いつもはレイナ付の女中数人が交代で運んでくる。

「みなさんほかの仕事で手がふさがっているそうで。給仕場の前を通りかかったら、代わりに運んでくれと頼まれました」

ユウリは静かな声で淡々と話す。

久しぶりにまともに聞いたその声は、以前と変わらず穏やかで、レイナの気分を不思議と落ち着かせてくれる。

「たまにはいいでしょう、予想外の運び手が来るのも」

「まあ、そうだね」


ユウリが手際よく紅茶を注いでいくのを、レイナはじっと観察でもするように見ていた。

良い香りが部屋の中に広がる。

ユウリはレイナの視線には気づかない様子で、てきぱきと作業を進めていく。


ほどなく、紅茶と菓子がレイナの前に運ばれてきた。

白磁のカップに注がれた紅茶は、深い橙のような美しい水色をしている。光の具合で表面に金の輪ができる。いつもと違う茶葉なのだろうか。

きらきらと光る輪はとても印象的で美しい。

添えられている焼き菓子にはこんがりとした焼き目がついていて、上にはたっぷりと果実のジャムがのせてある。

レイナの好物だ。

「おいしそうだね」

レイナの顔がほころぶ。

それを見たユウリもわずかに口元でほほえんだ。


紅茶も菓子も、久々においしいと思った。

毎日運んでもらっているが、最近はおいしいのかどうかわからなくなっていた。

気持ちの問題だろう。

沈んだ気分で口にしても、おいしさをかんじとれなかったということなのだ。

ユウリが運んでくれたというだけで、こんなにおいしいと思うとは。

自分もずいぶんとげんきんなものだと、レイナは心の中で苦笑した。


(つづきへ→)

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■ コメント

Re: タイトルなし

<<れもん様

あけましておめでとうございます^^

今年もよろしくお願いいたします!


食べ物の描写には特に力を入れております。

自分自身が食べることがすっごく好きなので(笑)

あけましておめでとうございます・・!
いつもお世話になっております

紅茶とお菓子の様子を表現する文章が綺麗で思わずうっとりしちゃいました☆

おいしそう・・♪

今年もよろしくお願いします!!

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