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ハトノユメ

自作小説ブログ

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回帰 (1)

まだ客のいない店内には、店主がカップをみがくキュキュっという音だけが響いていた。

開け放った窓から、明るい光が射しこんでくる。

五日ぶりの晴天に、店主の顔がほころぶ。今日は、いいことがありそうだと思えてきた。

【コメット】という名のその店は、町外れの小さな丘の上にぽつんとある。店主手製のドーナツと、自家焙煎のコーヒーを売りにしている。

店主はまだ若いが腕は良い、との評判で、一度来た客は、たいていまた訪れる。

ドーナツが気にいるもの、コーヒーを好むもの、店の雰囲気を楽しむもの。

理由はさまざまだが、一度しか来ない客はめったになく、たいていは、ありがたいことにまた訪ねてきてくれる。その様子が、回帰する彗星のように思えた。

彗星の回帰周期が様々であるように、当然客の回帰周期もいろいろだ。足繁く訪れるものがいるかと思えば、開店当時に一度だけ来た旅人が、また再びこの地を訪れた記念にと寄っていくこともある。

たくさんの人々の、それぞれの回帰を、この店で待っていることが店主の楽しみであった。


------


コーヒーの抽出器具を点検しているところへ、ふいに扉を開ける音が聞こえた。

足音が近づいてくる。

扉には【準備中】の札を掛けていたはずだ。開店時間にはまだ早い。


「よう、元気にしてたか」

小さな廊下を通って店内に姿を見せたのは、ときおりぶらりと訪れる、気心のしれた友人だった。飾り気のないあいさつに、店主の顔がほころぶ。

「見てのとおり、元気だよ。きみこそ元気にしてたのかい。ずいぶんごぶさただったじゃないか」

「ちょっと遠くの勤務地に行っていたんでな」

そう言って笑う。ひさしぶりに見るその顔は、以前よりもひげが濃くなっている。大きな体をカウンターの椅子におさめた。

「そうだったの。何か飲むかい」

「まだ準備中だろう」

「大丈夫、もうほとんど終わってたんだ」

「そんなら、コーヒーをたのむよ」

「濃いめで、あつあつ?」

「そう、いつもどおりに」

「了解」

小気味よく答えると、今さっき点検を終えたばかりの器具で、さっそく本日一杯目のコーヒーを淹れる準備にとりかかった。


(つづきへ→)

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■ コメント

Re: タイトルなし

<<れもん様

いえいえとんでもないです。いつもありがとうございます^^

いつの間にか場面転換しました。

物語は終盤に入っております。

お時間ありましたらまた読みにいらしていただければうれしいです。

なかなかコメできなくてスイマセンっ!

おっと、場面がとんだ!?

え、この人たちはいったい誰!?

でも、なんだかやわらかそうな雰囲気・・・・

あ、いいですね、ドーナツ((笑

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