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ハトノユメ

自作小説ブログ

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僚機 (5)

滑走路に二機が戻ってきた。

そのまま格納庫の前まで移動する。アルバトロスは飛行機を停めるとコックピットをでた。翼をつたって地面へと降り、機体のまわりを一周する。

一見したところ、損傷箇所はなさそうだ。

細かなチェックは整備士に任せ、アルバトロスは休憩所へ行くことにする。途中、イーグルとは会わなかった。彼の機体は別の格納庫を使っている。飛行機を降りたその足で上官へ報告に行ったのかもしれない。偵察任務の場合、報告はリーダーにのみに科せられる仕事だから、アルバトロスにはもうすることはなかった。

休憩所でいつものレモン水をもらったアルバトロスは、手近な椅子に座って一息ついた。

そこへバーディがやってくる。バーディはテーブルをはさんで向かいの席に腰かけると、

「どうだった?」

と身を乗り出して訊ねてきた。

「どうって?」

今日の飛行のことを聞きたいのだろうとは思ったが、具体的にどのポイントに興味があるのかはかりかねたアルバトロスはおうむ返しに言った。

「イーグルと飛んだんでしょ?どうだった、彼の飛び方は」

今日のバーディはソーダの瓶を手にしている。かすかにシュワシュワと音をたてながら絶えず泡をうみだしているその飲みものは、まるでバーディそのもののようだと思った。

「切れ味するどい飛び方だったな。それと、速度の上げ方のテンポがとてもよくて、一緒に飛んでいて気分がよかった」

アルバトロスは今日の任務中にかんじたことを率直に話した。

「きみの印象でも、かなり腕がいいと思った?」

「うん、たぶんかなりいいんじゃないかなと思う」

アルバトロスはイーグルが戦闘中にどんな動きをしていたかは見ていない。彼は敵機を一機墜としているはずだが、その前後はアルバトロスも敵と交戦していたのでひとの飛び方を観察している余裕はなかった。だがそれ以外の場面から想像して、彼が相当の乗り手であることはほぼ間違いないだろう。

そのあといくつかバーディと言葉を交わしているうちに空腹をおぼえたアルバトロスは、席をたって休憩所の端にある売店をのぞきにいく。バーディもついてきた。

品揃えは菓子が中心で、ビスケットやスナック、キャンディーやミントタブレットが数種ずつ並んでいる。バーディは迷う様子もなくスナックを買った。トマトのフレーバーがついているらしく赤いパッケージが目を引く商品で、「おいしいよ、ぼくはいつもこれ」というバーディは、支払いをすませるとすぐに封を開けて食べはじめた。本当に好物らしい。

アルバトロスはビスケットを買った。席にもどって食べてみると、ほのかなバターの風味でおいしい。

「そういえば、バーディ、ぼくきみに聞きたいことがあったんだ」

「なに?」

バーディはトマトのフレーバーをくっつけてぱくぱくと食べつづけているために口の周りをわずかに赤くしている。そのすがたは妙に愛嬌があると思った。

「この基地のちかくで、ドーナツを売ってる店はある?」

「ドーナツ?好きなの?」

「うん、食べたいんだけど、どこで買えるか知ってる?」

バーディはスナックを食べる手を止めて「うーん」と言って考えはじめた。

「基地は市街地からはなれているからなぁ、周りに店はないよ。バスで三十分くらい行くと街があるから、そこにならあるかもしれないけど、確信はない」

バーディはすまなそうな顔をした。

「ごめん」

「そんな、気にしないで。すごく食べたいってわけじゃない」


売店で買ったビスケットを半袋ほど食べたあたりで、アルバトロスは空腹が満たされ眠くなってきた。バーディに「お先に失礼」とあいさつして休憩室をでた。

いつの間にか日はかたむき、窓から西日がさしている。もう、今日の任務はないだろう。今の腹具合では、夕飯は食べられそうもない。シャワーで汗を流したら、早めに床につくことにする。


オレンジ色に染まった廊下を静かに歩いてゆく。途中、誰とも会うことはなかった。


(つづきへ→)


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