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ハトノユメ

自作小説ブログ

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春にあそぶ (2)

あれは子供のころの、穏やかな春の庭でのこと。

おちつきなく走りまわっていたレイナは、少し離れたところに見知らぬ少年がいるのに気づいた。

ほっそりとした姿で、清楚な服装。

色とりどりの花が咲き乱れるなかを、少年の後姿はゆったりと動いていた。

  我が家の庭には近在では珍しい草木がいくつもあるのだよ。

レイナは以前兄からそんなことを聞いていたから、少年はきっとそれを見に来たのだろうと何となく思った。他家の庭を見たことのないレイナにははたしてどれが珍しい草木なのかはよくわからなかったが、少年は熱心に庭の植物を眺めている様子で、きっと珍しいものが植えてあるのだろうと思わせた。

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あとから考えてみれば、レイナの家はラスファイド王国の武門の名家で、都でも相当豪勢な邸宅を構えている大貴族であるから、屋敷の警備は厳重、人の出入りは常に監視されているような状態で、見知らぬ子供が気軽に庭を見に来るようなことはないということはすぐに思い至る。

しかしながらその時のレイナは、少年の自然に庭と調和し草木を眺める様子に何の不審も抱くことはなく、ただ美しい絵画を見るような心持で遠くから見ていたのであった。


しばらくその夢の中のような光景を眺めていると、ふいに少年がこちらをふりかえった。

ほんの一瞬、レイナと、少年の目が合う。

少年は庭に自分以外の人がいたことに少しばかり驚いた様子で、きょろきょろと周囲を見回したかと思うと、すぐうつむき加減になり、傍らの木の陰に姿を隠そうとした。背中越しに視線だけでそっとこちらを伺うようにしている少年の首筋に、淡いみどりの影がいくつも連なるようにおちてゆらめく。

  あの子、まるでガラス細工の首飾りをしているみたいだ。

ゆれ動くみどりの影の幻想的な佇まいに、レイナはしばらくの間見入っていた。

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それからほどなくして、レイナの父が庭に姿をみせ、少年をレイナの前に連れてきた。

  レイナ、この子はユウリというんだ。今日からこの家で暮らすことになった。仲良くするのだよ。

そう紹介された少年は、うつむきがちだった顔を上げると、ほんのすこしだけほほえんだ。


(つづきへ→)

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