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ハトノユメ

自作小説ブログ

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秋にめざめる (8)

内部は、驚くほど清涼な空気で満たされていた。

窓を定期的に開け放って換気しているのだろう。掃除が行き届き、ほこりのあとも見られない。

やはり、だれかが住んでいるらしい。


建物の中心をしばらくまっすぐの廊下が続いている。

廊下の両側にはいくつかの扉。その扉のむこうには何の気配もない。

もっと奥。廊下を突き当たったところから気配をかんじる。

突き当りにはひときわ大きな扉がある。


レイナは扉をひとしきりながめると、静かにノックした。

しばしの静寂ののち。

「どうぞ、お入り」

と、扉の奥から返事があった。

女の声。

レイナとユウリは顔を見合わせる。

レイナが頷くと、ユウリはわかりましたという仕草をしてみせる。

レイナは、

「失礼します」

と声をかけ、ゆっくりと扉を開けた。


不思議な装飾品が部屋を満たしている。

ほの明るい照明器具がいくつか設置され、その淡い光に照らされた室内は、妙に幻想的な印象をかもし出している。


部屋の奥に、小さな人影。

近づくと、卓の向こう側に、椅子に腰掛けた女性がひとり。

年のころは、老齢といってよい頃合だろう。

頭から薄布のベールを纏っているため顔はよく見えないが、卓の上に置かれている両の手には、幾筋かの皺が刻まれている。

爪を美しく彩色し、不思議な文様を描いてある。


「こんなところまでよく来たね。待っていたよ、運命の子」

老女はゆっくりと、静かな声で言った。

ベールからのぞく口元がかすかに微笑んでいる。

「私たちが来るのを待っていたのですか」

レイナがたずねる。

「お前さんが来るのを待っていたんだよ。気配をかんじたからね。そろそろだろうと思っていた」

レイナは目を丸くする。

「……私?」

「そうさ、運命の子。そら、そこの椅子にかけたらいいよ。立ち話ってのもどうかと思うからね。お連れの子もいっしょにかけなさい」

老女は傍らに置いてある二人掛けの布張り椅子を指して勧める。

レイナは「はい」と言って素直に腰掛けた。ユウリは動かない。

レイナが見ると、ユウリは「このままで」と言った。従者であるから座ることはできないと言いたいのだろう。だがレイナはそんなユウリの腕をつかみ強引に隣に座らせた。

「せっかく勧めてくださっているんだから、素直にかけなよ」

その様子を見ていた老女の口元は、さらに笑みを増したようだった。


(つづきへ→)

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