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ハトノユメ

自作小説ブログ

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秋にめざめる (6)

二人は小さなくぼ地へと移動すると、背負っていた荷をおろし、食事をとることにした。

パンに保存食の干し肉、乾燥トマト。任務中に携帯しておくごく一般的な食料。

ユウリは簡易コンロで湯を沸かし、粉末状の茶を溶かした。

器に注いでレイナにふるまってくれる。

冷えた体に、暖かい飲み物はありがたい。


「ねえ、ユウリ。前から気になってたんだけど、きみはどこで茶の知識を仕入れたんだい。何だか妙にくわしいよね」

「別にくわしくはありませんよ」

自分の分の飲み物を器に注いでいたユウリはレイナのほうを見ずにそう答えた。

「そうかな。前に紅茶を淹れてもらったとき、すごくおいしいと思ったんだ。他の人が淹れてくれたのよりもずっとおいしかった」

ユウリは静かに茶を飲みながらレイナの話を聞いている。

「きみの淹れてくれた紅茶には、金の輪が浮いていたんだ」

「金の輪?」

「そう。光の加減で表面に綺麗な金の輪が見えるんだ」

ユウリは何かを考え込んでいるような表情をした。

器に残っていた茶を一気に飲み干す。

「ぼくも金の輪をみたことがあります」

「へえ、どこで?」

「ぼくの母がぼくに淹れてくれた紅茶に、金の輪が浮かんでいました」

「お母さん」

「はい。ぼくは母から茶の淹れ方を教わりました。ごく基本的なことだけですけれど。そのとき、母が繰り返し言っていたことがあります」

「何?」

「おいしい茶を淹れるには、それを飲んでくれる大切な人を思って淹れればよいのだと。そうすればおいしくなると言うんです」

「へえ」

「そしてそうやって淹れた茶には、黄金の輪ができると」

「本当かい、それ」

「さあ、でもぼくの母は信じているようでした」

「きみも、そうやってるの?」

レイナは静かに訊ねた。

「……そうですね、たぶん、そうしていると思います。レイナさまにおいしい紅茶を飲んでいただきたいなと考えながら支度していますから」


レイナはしばらく遠くを見つめて黙りこんでいた。

自分のことを考えてくれる人がこんなにも近くにいてくれる。自分を心配し、支えてくれる。そういう人がいるということはとても幸運ではないだろうか。今更ながら強くそう思い、涙がでそうになるのを懸命にこらえていた。


「ねえ、ユウリ。この戦いが終わって、ラスファイドが平穏になったら、わたしに紅茶の淹れ方を教えてくれないかな。わたしも、金の輪が見える紅茶を淹れてみたい」

「ぼくでよければいつでもご指南いたします」

「うん、たのんだよ。そのためにはまず、この森を無事に抜け出さないとね」

「はい」


ユウリの瞳には、再び青の色が宿り始めていた。

レイナはそれを見てユウリを止める。

「ユウリ、アミニノードは使わなくていいよ。かなり消耗するだろう」

「ですが」

「実はね、さっきから少し気になっている方向があるんだ」

レイナは左手のほうを指し示す。

「あっちの方角に、何かあるような気がするんだ。すごく漠然としたかんじなんだけど」

ユウリは不思議そうな表情をしてレイナが示したほうを見た。

自分は何も感じないが、と言いたげだ。


しかし、レイナには奇妙な確信が湧いてきていた。

アニミノードの使えないこの森では、むしろ自分のようなアニミノードに長けていない人間の感覚を働かせてみるのがよいかもしれないと。

「ユウリ、ここはわたしを信じてみないかい?年の功ってやつでさ」

「一つしか違わないでしょう」

「一つでも私が年長であることは確かだろう」

「それはそうですが」

レイナは不敵にも笑顔をみせていた。


(つづきへ→)

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