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ハトノユメ

自作小説ブログ

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秋にめざめる (4)

レイナの予想通り、ユウリは事務室にいた。

今朝ほどは机の上に大量の書類や書籍が積み上げられていたが、今はほとんど姿を消し、すっきりと片付けられている。ユウリが整理したのだろう。こういった仕事の速さはレイナも驚くばかりである。アレイス家で奉公していた時分にも似たような仕事を任されることが多かった。

ユウリの有能さはレイナが一番よくわかっているつもりである。官吏になれば相当な能力を発揮するのではないかとひそかに思っていた。自分の侍従をさせておくのはもったいない人物であることは百も承知だが、それでもずっと仕えてもらいたいと願ってしまうのは、自分がさびしがり屋だからであろうか、とレイナはふと思う。だが口にはしない。

「すごいな、ずいぶんすっきりしたじゃない」

声をかけると、こちらに背を向けて壁際の書棚に本を収納していたユウリがゆっくりとふりかえった。

「このところの忙しさで皆さん手が回らないようでしたので、差し出がましいかとは思いましたが勝手に整理させていただきました」

「みんな誰かがやってくれればいいなと心ひそかに思ってたはずだよ。すごく助かると思う」

「それならよいのですが」

ユウリは少しだけ目を細めると、またレイナに背を向けて本の収納を始めた。

あと五冊。

ユウリが作業を終えるのを、レイナは静かに待った。

束の間、ユウリの後姿を見つめる。最初に会ったときから変わらない、清楚な印象の後姿。もちろん背丈は思い出のなかよりもずっと大きい。

最初に会ったときはとても小柄で、レイナよりも小さかったが、今は頭半分くらい追い越されている。

来年成人となる男子としては、ごく平均的な身長だろう。隊服がよく似合っている。

「実は、局長がお呼びなんだ」

作業を終えたユウリの背中に話しかける。

ユウリは不思議そうな顔をしてふりかえった。

「僕も、ですか?」

「うん。きみと私と。三階の作戦室に来てくれとのことだ」

「いつ伺えば?」

「ええっと、さっき十五分後にと言われたから、あと五分後には作戦室に着いていないといけないな」

「急ぎの用事なら早くおっしゃってくださればよろしいのに」

「ごめんごめん」

レイナは軽い調子で言った。

ユウリはその様子を奇妙に思ったらしく、本棚のほうをさし示して、

「気を遣わせてしまったようですね」

と申し訳なさそうな顔をした。

「作業が終わるまで待ってくださったんですね」

「別にそういうわけじゃないよ」

とぼけるレイナをユウリはかすかに笑顔をつくってながめた。

「参りましょう」

「そうだね。局長にしかられないように」


(つづきへ→)

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