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ハトノユメ

自作小説ブログ

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明け方の散歩道(4)

ほどなくして、まぶしい光が水平線にあわられた。

目を細めてその光を追う。

じわじわとふえてゆく光が、海の上に黄金色の絨毯をひろげた。

太陽が、姿をみせる。

少しずつ、少しずつ。

何度見ても美しい光景だと思う。

このまぶしい光を浴びると、悪夢をふりはらってくれる気がする。

トキは光に満たされた中で、大きく深呼吸をした。

ふと傍らを見ると、少年は膝を抱えた格好で海をじっと見つめていた。

トキの視線に気づいて顔を向け、微笑をみせた。光に照らされたその顔を見る。

整った顔立ち。

「きれいだね」

少年が言った。トキは「うん」と応じて自分も笑顔を見せた。


その後も二人でしばらく海を見ていた。知らない人間と二人並んで景色をながめているにも関わらず、居心地は悪くない。

トキは、傍らの少年について考えた。この町では見かけない顔。もちろん学校でも見かけたことはない。

旅行者だろうか。

少年はポロシャツに細身のパンツという服装。

いかにも普段着といった様子だ。

この土地の人でも日常的に身につけるようなもので、あまり旅行者らしくはない。トキがたまたま知らないだけで、町の住人なのかもしれない。

それよりも気になることがあった。少年の足首にちらりと見えている靴下の柄。日の出を見ている間は気付かなかったが、かわいらしい小花模様なのである。

もしかしたら自分は勘違いをしているかもしれないな、とトキは思った。大きな勘違いを。そう思ってみると、傍らの子の手足が妙にか細い気がしてくる。

「どうしたの、じろじろ見て」

不思議そうに問われて、トキは視線を外した。じっと見ていたことが気恥ずかしかった。

「いや……、ねえ、きみ、この町の子?」

トキの問いに、傍らの子はかすかに笑った。

「昨日から、この町の人間になったばかりなんだ」

「へえ、どこから来たの」

町の名前を言われたが、トキにはわからなかった。この近辺ではないようだ。

「ぼくはトキ。すぐ近くに住んでるんだ。きみの名前は?たぶん同じくらいの年だよね。ぼくは十四なんだけど」

トキは普段の自分からは想像できないほど、するすると語りかけた。いつものトキはかなり人見知りをするほうで、なかなか親しい友人はできない。

この町に来てからも、特に親しくしている人はいない。

学友とも、教室以外の場所で会う約束をしたことはなかった。

トキが本来の、年相応の無邪気さをもって自然に接することができるのは、故郷にいるごくごく親しい人、片手で数え終わってしまうくらいの人だけだ。

トキの問いに、傍らの子は、

「カナメだよ。年は同じだね。よろしく」

と答えて、すっきりとした口元に笑みをうかべた。

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