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ハトノユメ

自作小説ブログ

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僚機 (1)

翌日、アルバトロスに飛行命令が下った。

偵察任務ではあるが、今までとは目標ポイントがかなりちがう。

僚機がイーグルだと聞いて、アルバトロスは昨日のことを思い出した。

バーディの話、イーグルの話。

バーディの飛び方、イーグルの飛び方。

いろいろなことが頭の中にうかんだ。

こんなに早くイーグルが飛ぶところを見られるとは思わなかった。ここのエースであろう彼の飛行がどんなものなのか、同じ飛行機乗りとして単純に興味がある。昨日の彼の言動から察するに、かなりの乗り手にちがいない。そして彼自身がそれを自覚し、自信をもっている。はたしてどれほどの腕前なのか、自分の目で確かめてみたい。

外へ出て格納庫へ向かう途中、建物脇の喫煙場所にいるイーグルと会った。イーグルはアルバトロスに気づくと、「今日はよろしく」と言って右腕をひょいと上げた。指に吸いさしの煙草を挟んだまま。切れ長の目にすっきりと鼻筋がとおったイーグルは表情をあまり変えることがない。いつでもクールな印象だ。

アルバトロスも「よろしく」と言って格納庫へ向かった。

二番格納庫の一番奥に、アルバトロスがこの基地へ来てから使っている機体がある。ほかに二機が格納されているが、使われているのはそのうちの一機だけ。使われていない機体は整備はされているがほかよりも型式の古いタイプで、非常時の予備であるらしい。それは、外観のカスタマイズにやや違いがあるものの、アルバトロスが飛行機乗りになって一番最初に乗った機体と同じ型式のようである。あの飛行機は良かった。軽くて、自分に合っていた。目の前の機体に乗ってみたいと思ったが、今のところその機会はない。

予備の一機を横目に通りすぎ、アルバトロスは自分が乗る機体へと近づいた。整備士による最終確認はすでにおわり、機体は外へと移動しているところだった。準備完了の合図を待って翼に乗り、コックピットに体を納める。


操縦席に座ると、自然と思考が冴えてくる。眠っていた獣が目をさますような感覚。アルバトロスはこの感覚が嫌いではない。

滑走路脇の待機場所まで移動し、管制塔からの離陸許可を待つ。隣にはイーグルの機体が同じように時を待っていた。やがて待ちわびた許可がおり、事前の打ち合わせどおりイーグルが先に飛び立った。そのあとを追うように、アルバトロスも地上を離れる。なめらかに、空と地とのあいだに境界線などないかのように飛び立つ。

そういえば、バーディにドーナツのことを聞き忘れていた。もどってきたら聞こう。

そんなことを考えた。


(つづきへ→)

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