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ハトノユメ

自作小説ブログ

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転籍 (3)

コンドルは、凄腕のパイロットとして有名な人物だ。

パイロット仲間だけでなく、ひろく世間一般にまで名前を知られている。子供はともかく、大人ならたいていその名を知っている。さきの大戦のときにめざましい活躍をした人で、ひとりで千機墜としたという噂があるほどだ。千機は大げさだとしても、先の大戦のときにこの国に多大な貢献をしたのは事実だろう。

コンドルは十年ほど前まで第一線で活動していたが、あるときぱったりと姿を消し、以後消息不明となっている。どこかで墜とされたんだという人もいれば、飛びすぎた挙句地上に戻れなくなり今も空にいるんだというようなことをいう人までいる。

そんないわば英雄を引き合いに出されても困るな、とアルバトロスは思った。対して、どうやらコンドルをくわしくは知らないらしいバーディは気に留めるようなそぶりはない。「それにしてもさ」と別の話を進めはじめた。

「きみの前にいたところ、ずいぶん辺鄙なところだったんだね。なんできみみたいなのがあんな基地ににいたんだろうって思ったけど、ずいぶんひどいけがをして転籍になったんだってほんとう?」

バーディはまた紅茶をがぶがぶのむ。ついでに氷をがりがりと食べはじめた。アルバトロスはそのようすをながめながらゆっくりと口を開いた。

「うん、最初はしばらく療養しろといわれてあの基地に移ったよ。でもけがが治ったあともほかへ行けとは言われなかったから、左遷だと思った。もう前線にもどることはないだろうなって」

「まさか。きみの腕を上層部が使わないわけないだろう」

「買いかぶりすぎだ。それにぼくは団体行動が苦手だから、みんなの足並みを乱すのが心配なのかもしれないよ、上のひとは」

「ああ、それならここは大丈夫だよ。もともと団体行動とは無縁のやつらばかり集まってるから。その筆頭がほら、あそこに座っている」

バーディは少しはなれたところにいる栗毛の少年のほうへ視線をなげた。こちらに背を向けて座っている。

「イーグル?だったよね」

「そう。どうしようもないくらい単独行動好きのイーグル」

「腕はいいんでしょ?」

「まあね、ここではピカイチ」

「きみだってかなりのものでしょ。ほかに出向するくらいだもの」

「そんなことないよ」

バーディは少してれたような顔をした。

「あいつ、イーグルもついこの間まで長いこと出向してたんだよ。ぼくが出た時はまだ戻ってきてなかった。あいつも最近になって急きょ呼び戻されたんだ」

「じゃあ、ぼくがここへくるほんの少し前に戻ってきたってことか」

「そういうこと。こんなに急に人数をそろえだすなんて妙だろ。何かあるよ」

「そうかもしれない」

アルバトロスはようやくレモン水をのみ終えた。

イーグルはこちらの様子にはまったず気づくことなく煙草をすいはじめた。


(つづきへ→)

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