fc2ブログ

ハトノユメ

自作小説ブログ

夏にたびだつ (5)

「……やはり入隊なさるんですか」

しばらく無言で景色を眺めていたレイナに、ユウリがぽつりと問いかけた。

「そうするつもりだよ。明日にでも志願書を出しに行く。受理してもらえるかはわからないけど」

レイナは眼下の都のほうに視線を貼りつけたまま言った。

「もう決めてしまわれたのですね」

「うん。私だって武門アレイス家の一員だ。非力かもしれないけど、この危急のときに何もしないで家に閉じこもっているなんてできないよ。第一線で活躍したいなんて大それたことを考えているわけじゃない。残念ながら実践経験はまるでないからね。でも炊き出しの手伝いでも物資を運ぶ手伝いでも何でもいいんだ。少しでも手伝えることがあるならぜひやらせてほしい、それだけだ」

そこまで言うと、レイナはユウリのほうに視線を移した。

ゆずらない、という強い意志をそのまなざしに宿していた。


ユウリはしばらく黙ったまま、レイナの視線を受け止めていた。

レイナも静かにユウリの言葉を待つ。

やがてふうっとひとつため息をついたユウリは、少し困ったような顔をして、

「レイナさまのお考えはよくわかりました。あなたが入隊されるのでしたら、ぼくもお供させていただきます」

と言ってきた。

「一緒にきてくれるの」

「レイナさまが行かれるところはどこへでもお供すると申し上げたはずです」

「本当にいいのかい?いやなら来なくていいんだよ、無理にまきこむのは気が引ける」

レイナはユウリの表情をうかがった。

もちろん一緒に来て欲しいというのがレイナの本心だが、強制はしたくない。今のユウリには、兄に仕えてアレイス家に残るという道もある。

ユウリの顔は、少し寂しげな表情をしたように見えた。

「少し歩こうか」

レイナはユウリを促して歩きはじめた。

(つづきへ→)



スポンサーサイト



 | HOME | 

■ プロフィール

麦倉ハト

Author:麦倉ハト
------
オリジナルの読みもの公開ブログ。
ファンタジーが好き、ちょっとせつない読後感を目指す管理人がマイペースに書いております。

■ カテゴリ

■ 最新コメント

■ 最新トラックバック

■ 月別アーカイブ

■ 検索フォーム

■ リンク

■ QRコード

QRコード