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ハトノユメ

自作小説ブログ

夏にたびだつ (4)

「これからどうされるおつもりなんです?」

レイナから三歩ほどの位置でゆっくりと腰を下ろしたユウリが静かに訊ねてきた。

ユウリの顔からは早くも汗はひき、いつもどおりの淡白な表情になっている。整った造作もあわさって、血の通わぬ人形のように思えた。


瞳の色は、まだわずかに先程の青の色味を残している。


瞳が青くなるのは、アニミノードと呼ばれる技能を持っている証。

アニミノードは万物の気配を感じ取り、それを増幅、減弱させる技術のことをいう。

つまり人、動物、植物から石、土、水、空気にいたるまで、この世に存在するあらゆるものにはそれぞれ特有のエネルギーがあり、そのエネルギーを引き出したり、逆に閉じ込めたりすることで、いわゆる超常現象のようなものを引き起こすのである。たとえば、遠くにあるものを手を触れずに異動させたり、火の気の無いところに火をおこしたり、特有のエネルギーを識別することで探し物をしたり。

そういった超常の力を操る技能がアニミノード。

この力を使うと、使用者の瞳の色が青く変化する。強い力を使うと、それに比例して青は鮮やかさと濃さを増す。

ラスファイドでは、全てのひとにこの能力はあるとされている。ただその力の強さにはかなりの個人差があり、中には本能的のこの能力を使うのに長けたものがいて、何の訓練も受けなくても難なく念動力を使ったりすることがあるが、逆にかなり訓練してもほとんど力を発揮しない者もいる。


士官学校では、全ての学生が少なくとも一度はこのアニミノードの専門的な訓練を受けることになる。

戦闘において非常に役立つ能力であるため、個人個人の能力に応じてできる限りの技能を修得できるようにする。


レイナはアニミノードに関してはごく平凡な才能しか持っていなかった。卓越した剣技と比べるとあまり人に誇れるようなものではない。

そんなレイナに対して、ユウリはというと、かなり恵まれた才能を持っているようである。

人前ではあまり力を見せようとはしないが、レイナの身に危険が及びそうになったときに、その力を使って助けてくれたことが過去に何度かある。


今もきっとそうだろう。

急に姿を消したレイナを見つけるために、普段は使わぬアニミノードを駆使して都中を探したのだろう。この広い都で、たくさんの人の中からレイナの持つ固有のエネルギーだけを探知するのは容易ではない。

レイナを見つけたときのユウリの瞳は真っ青だった。

あれほどの青を、レイナは士官学校でかなり優秀な技能を修得した学友たちにさえ見出したことはない。


「ユウリ、きみってやっぱり相当なアニミノードを持っているね」

「何です?急に」

「真っ青だったよ、さっきのきみの瞳」

レイナのその言葉に、ユウリは片手を顔に近づけた。レイナから視線をそらし、手で顔を隠すようにする。

「見間違いでしょう」

「苦しい言い逃れだな。なにも私にまで隠さなくてもいいだろう。誰にも言わないよ。きみが秘密にしていたいなら」

ユウリは何も答えなかった。

レイナはユウリのほうへと歩み寄って、傍らに座った。

ユウリの肩に手を置く。

「さがしにきてくれてありがとう」

そう言ってレイナが微笑みかけると、ユウリの表情も少しだけ和む。

「実は困ってたんだ。急に飛び出してきてしまったから、持ち合わせがなくて。少し貸してもらえないかな。近いうちに必ず返すから」

手を合わせてたのむレイナに、ユウリはゆっくり首を振る。

「戻りましょう、屋敷に」

「戻れないよ」

「レイナさま」

「兄上に啖呵をきってしまったんだ、すぐ戻ったらかっこ悪いじゃないか」

レイナは弱ったという顔をしておどけてみせた。

つられてユウリもわずかに表情を崩す。

瞳の色は、いつもの漆黒に戻っていた。


(つづきへ→)


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